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今月のゴルフ愛 最後の一滴「タイムマシン」

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右から左に傾斜する1mほどのライン。グリーンに残るは僕一人。何がオカシイのか知らんけど、背中越しに聞こえてくる3人の笑い声。こちとら、曲がり具合を見極めんと、必死でラインを読んでいるのに。。。
こんなとき、脳内に投影されるお決まりの光景がある。
黄昏来る教室。赤点を阻止すべく、僕は数学の追試を受けている。諦めたか、出来たのか、答案を提出して教室を出て行った奴らの笑い声が廊下に響く。僕は教室の真ん中で、問題を凝視して「わからんもんは、わからん!」と心にケリをつけ、答案を掴み立ち上がる。
ゴルフとは、オッサンをして子供時代にタイムリープさせる装置である。起動させるは、愛用のクラブでボールを放つだけ。一度、フェアウェイに走り出れば、誰もがガキンチョに戻る。落ち葉を足で掃い、ボールを必死で探し回る姿は、珍しい虫を探す姿と変わらない。齢五十八を重ねても、ミスショットに奇声をあげる。隠れんぼで鬼に見つかったときの「アッ!」よりも遥かに大きい。パットが決まれば、「俺はジャイアン!」と得意顔。日頃おとなしいアイツですら鼻息が荒い。最新のクラブを得意げに語る奴の顔は、ランボルギーニの消しゴムを自慢していた頃と何も変わらない。
カッコーン・・・フックラインを読み切りカップにボールが消えた。「ナイスイン!」グリーン横で見ていた3人が笑顔で迎えてくれた。あの日、廊下で僕を待ってくれていた奴らの姿に重なる。
18ホールが終わり、ジャケットに手を通した瞬間、タイムマシンは完全に停止した。鏡には、年齢相応に大人ぶった仮の僕が映っている。疫病神も一服中。最新のタイムマシンをブン回して野山を駆け巡るのも心地良し。

BUZZ GOLF 主筆
内本浩史
(うちもとひろし)

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