編集長Gです、この企画実行を決意したのは先月半ばのこと。
新作「TOUR B JGR」の取材をブリヂストンスポーツでお世話になった時、ゴルフボールのメカニズムについて取材の番外戦となった。
そのコミュニケーションから見識を深めれば深めるほどに、ゴルフボールの重要性に気付かせられる中、BUZZの先にいる全てのアマチュアゴルファーにそれを知っていただきたいという衝動に駆られたのがきっかけである。
ゴルフボールはモデル毎でその性能が大きく違うこと、そしてゴルフボールを厳選しなければいけないことをこの特集を通して知っていただければ嬉しい。
写真=田中 宏幸、aflo
取材協力=ブリヂストンスポーツ
ブライソン・デシャンボーのパワーゲームが注目されている。もちろん強靭なフィジカルが為せるパフォーマンスだが、インパクトからの初期条件を弾道として飛翔させるのはゴルフボールの役目。彼は「TOUR B X」をベストボールとしている。
ゴルフボールの教科書[担当教師]
ブリヂストンスポーツ株式会社商品企画1部
ボール商品企画ユニット
佐藤 克典さん
ツアーで戦うトッププロたちがゴルフボールにこだわっていることは、もうご存知のことだろう。
BUZZでも様々な企画を通してプロのこだわりからゴルフボールの重要性について啓発してきた。しかし、私を含む一般アマチュアゴルファーにとって、まだその重要さが十分に認知されているとは言えないのが現実だ。
大きな理由はプロや上級者に比べて不安定なショットスキルにある。
インパクトが不安定かつ、安定して真っ直ぐ飛ばせない中では、『ゴルフボールは何でもいい』と、優先度が全ての後回しになってしまいがち。しょうがない話でもある・・・。
「例えばスライスに悩むゴルファーが弾道を安定させるなら、つかまりのいいドライバーを選びますよね。それと同じようにスピン量(サイドスピン)を抑制できるゴルフボールを選ぶことで、弾道が改善できることをもっと私たちは知っていただきたいです」。
ゴルフボールはモデルが異なれば、そのパフォーマンスは大きく変わるとブリヂストンの佐藤さんはいう。自分にとって有利なボールを選んで欲しいというのが、全てのゴルフボールメーカーの願いだと代弁する。
「ゴルフの他に、ボールを選べるスポーツって思い浮かびますか?」そんな質問を受け、とっさに答えが出てこないほど、ほぼ全ての球技でボールは統一されている。
「ボウリングもボールを自由に選ぶことができますが、重くても軽くても自分に合っていない重さを選ぶとコントロールできますか?ゴルフボールだって同じ。ご自分のパフォーマンスを高める、発揮する上では最善のモデルを選ぶことが重要なんです」。
妙に納得できるボウリングの例え話。もし自分の使うゴルフボールが合っていないとすると、思うような弾道を描くことはできない。プロや上級者がゴルフボールを厳選するのはそれをよく知っているからである。
ゴルフ同様にボールを自由に選べるのがボウリング。自分に合っていない重量のボールでは分かりやすくパフォーマンスが発揮できないことが想像できる・・・ゴルフだって同じだ。
1935年
純国産ゴルフボールをブリヂストンが発売。当時価格は1球1円だった。
1992年
糸巻きゴルフボール全盛時代の「ザ・レクスター」。ニック・ファルドが使用して全英オープンに優勝。
1993年
プロ、上級者をターゲットとしたソリッドボール「レイグランデ」を初めて発売。ツーピースボールの飛距離と糸巻き同等のコントロール性能が話題となる。ジャンボ尾崎をはじめ多くのプロが使用して優勝を飾った。
2000年
世界初のウレタンソリッドボール「ツアーステージUスピン」の登場により、糸巻きを凌駕するショートゲームでのスピン性能を実現。全てのゴルフボールをソリッドボールへと移行させたモデルだ。
2021年
飛んで、止まるという相反する機能を最先端技術で実現している「ツアーB」シリーズ。タイガー・ウッズやブライソン・デシャンボーなど、世界屈指のプレーヤーたちが認める飛距離性能とスピン性能を兼ね備えている。
※3ピース構造・各層の働き
中間層
主に樹脂製。コアとの組み合わせで反発性やスピン量に影響を大きく及ぼします。
カバー
ボールのハンドル部。スピン系は軟らかいウレタン素材で摩擦力アップによるアプローチスピンアップ、ディスタンス系はアイオノマー素材が主流で反発性にも寄与する。
ディンプル
ボールの表面に施された凹凸。弾道を制御するボールの翼です。
表面コーティング
ボールの表面をクリア塗装し、耐久性をアップさせる。「ツアーB」シリーズのコーティングではスピン性能にも寄与している。
コア
ゴム製。ボールのエンジン。反発性とフィーリングに影響を大きく及ぼします。
ゴルフボールの進化の変遷を語れば、過去に糸巻きボールからソリッドボールへと構造が大きく変貌し、目覚ましい進化を辿ったことを知っていただきたい。
移行され始めたのが1990年代後半、2000年にウレタンカバーソリッドボールが発売されたことで、糸巻きボールは姿を消した。
「コアに糸ゴムを巻き付けた構造の糸巻きボールは圧倒的にスピンが多い特徴を持っていたことで、プレーヤーにはスピンをコントロールする技術が必要とされました。そして製品精度に優れずボール毎で性能のバラツキもあった。そういった弱点を解消するために、ブリヂストンでは糸巻きを排除したソリッドゴルフボールの開発をいち早く取り組んできた歴史があります」(ブリヂストン・佐藤さん)。
糸巻きからソリッドへ進化を遂げ、ロングショットにおける圧倒的な低スピン化が実現されたことで、目覚ましい飛距離の進化を歩んだ。
構造的なメリットは高初速化、高打ち出し、低スピンという飛びの三要素の全てで、糸巻きを遥かに上回る結果を多くのゴルファーが実感し、ソリッドボールへと完全移行。そして約20年の月日で進化した現代の最新型ソリッドボールでは、スピン性能に優れたスピン系(ツアー系)、飛距離性能に有利なディスタンス系と大きなカテゴリに分かれて、プレーヤー個々で最適なゴルフボールを選べる時代になっている。
ボール選びをする前に、まずは飛距離の本質を勉強しておきたい。
飛距離を構成するのは“高初速”、“高打ち出し”、“低スピン”というお馴染みの飛びの三要素である。
「10000分の5秒という瞬間のインパクトにおけるヘッドとボールの接触現象が、飛びの三要素、いわゆる弾道の初期条件を決定づけますが、プロとアマで決定的に違いが現れているのがスピン量です」(ブリヂストン・佐藤さん)。
飛距離が伸びるスピン量は2000〜2500回転に理想値がある。ブリヂストンがスタッフプレーヤーで測定したスピン量は、平均2500回転以下と見事にその理想値で飛ばしているという。
ちなみにタイガー・ウッズのスピン量は2200回転前後と超理想的低スピンで打っている。
「ブリヂストンで測定した一般アマチュアゴルファーのスピン量の平均値は3000回転超と、明らかにその数値が多いことが飛距離ロスの原因となっていました。低スピンにするためにはスイング改造する、低スピンになりやすいドライバーを使う、と方法はありますが、それよりも低価格で手軽にチェンジできる低スピンになりやすいゴルフボールを試してみませんか」。
例えばヘッドスピード43m/sで振れているなら、女子ツアー選手同等の約250ヤードという飛距離を実現させたいものだ。しかし、それが至難であることはこの特集をお読みいただいている皆さんならご承知だろう。
飛距離アップを実現するなら、余計なスピンを抑制できるゴルフボールを賢く選ばなければいけないことは間違いない。
シーソーでは回転の支点に近い場所に座ると、負荷がかかりにくく逆側の荷重を持ち上げにくい(回転しにくい)ことと同じ原理だ。
シーソーで考えるとわかりやすいが、端に座ることで負荷がかかりやすく逆側の荷重を持ち上げやすい(回転を促進させる)ことと同じ原理だ。
平均3000回転超という私たちアマチュアゴルファーのスピン量を改善するために、まず取り組みたいのはゴルフボールを試してみることだとプリヂストンの佐藤さんはいう。誰もが明日のゴルフよりトライできるわけだが、どんなタイプのボールを選べばいいのだろうか。
「インパクトでボール全体が潰れるドライバーショットの場合は、軟らかく大きく潰れるボールを使用されることを推奨します。現象として硬いボールはスピン量が多くなりやすく、軟らかいボールはスピン量が少なくなりやすい特性があるからです」。
ボールの硬さの基準は“コンプレッション”(ボールが1インチ変形する荷重の力)で表記されている。つまりコンプレッションの値が低いものが、やわらかいものであり、低スピンに寄与するのである。
「ディスタンス系ボールが飛距離に有利とされているのは、スピン系ボールに比べて最内層のコアがやわらかくドライバーショットでボールが潰れやすいという、スピンを抑制する機能に優れているからなのです」。
多くのアマチュアゴルファーにとっての飛距離不足における諸悪の根源となっているスピン量の過多は、ディスタンス系ボールに変更することで、解決できる期待値は大だ。
スピン量の抑制はバックスピンだけでなくサイドスピンとも連結しているため、曲がりも抑えられて、ショット全体のクオリティアップにも貢献するのである。
小さなストロークでショットコントロールするアプローチでは、コアよりカバーの変形が大きくなるため、カバーの軟らかさがスピン性能を左右する。
ディスタンス系ボールは主に反発性の高いアイオノマー素材を、スピン系ボールは主に軟らかいウレタン素材が採用されているため、ショートゲームのスピン性能ではスピン系ボールが有利である。
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