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今月のゴルフ愛 最後の一滴「たかが一打、されど米一俵」

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50センチのパットも、340ヤードのドライバーショットも、スコアにカウントされるのは「1打」。その重さに違いはなく、どちらも気は抜けない。

ショートパットに悶絶しながらマスターズでグランドスラムを手にしたローリー・マキロイの姿は記憶に新しい。SGP(ストローク・ゲインド・パッティング)なる指標では、マキロイの▲0.31に対し、2位のジャスティン・ローズは+1.07。マキロイはパットで損をし、ローズは得をした。一方、マキロイのショットがキレキレだったことも数字が物語る。たかが1打。されどワンパットにドラマが沸騰する。だからゴルフは面白い。

一方、見た目は同じでも重さが変わるものもある。昨年4月に2,000円だった5㎏のお米が、今年は4,200円となった。重さが変わったのは米ではなく、お金の方だ。

千円で2.5㎏買えた米が、いまや1.19㎏。お札に千円と刷られていても、実質の価値は476円。江戸時代の「天保の大飢饉」では、米価が2倍に跳ね上がり、一揆や打ちこわしが相次いだという。令和の僕らは、スーパーの棚の前で「…無い」と途方に暮れ、あっても「高っ…」とつぶやいて、なんだかそれだけで済ませてしまう。令和ニッポンとは、そういう時代だ。ただ、ツケが回される先は時代を越えても変わらない。

ところで、リユース市場にパターが出回る量はドライバーと比べてずっと少ない。パターとは信用力である。自身の技量は横に置き、入るか入らないかで信用が決まる。たとえ新調したパターであっても、信用はできない。いつでも戻せるようにと古いパターを物置の入り口にしまう。そんなこんなを毎度繰り返すものだから、ゴルフ歴とともに物置のパターの本数だけは増えてゆく。

1打の重みは昔も今も変わらない。されど1円の重みは随分と軽くなり、米一俵ならぬ一票の価値もフワリと浮かんで定まらない。そんな軽さと重さをグリップに握りしめ、今日も僕は50センチのダボパットに真剣だ。

 

内本浩史(うちもとひろし)
BUZZ GOLF 主筆

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