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BUZZ GOLF 2021年7月号 発行
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クラブを打った評価も面白いけれどそのクラブ開発の背景を知ることも面白い。
そこに関わる多くの人々の真摯な想いを知らずして、軽々しくクラブの評価などできないのだ。
今回はブランド発足11年目を歩み始めたパーツブランド「メタルファクトリー」のこれまで、そしてこれからを取材し、ゴルファーに求められたブランドの使命をレポートする。
取材者はクラブコーディネーターの鹿又芳典さん、パーツブランドに造詣を持つ第一人者だ。
鹿又芳典
かのまたよしのり、ゴルフショップマジックを主宰。ゴルフメディアではクラブコーディネーターとして活躍中。
撮影=小林司 取材協力=朝日ゴルフ
今から10年前、2012年に「メタルファクトリー」は突如、私たちの目の前に姿を現した。
驚いたのはその風貌、キワモノが現れたと誰もが感じたが・・・。
鹿又です。「メタルファクトリー」が発足して早10年の月日が経ちました。10年前、私が主宰するゴルフショップマジックにも新ブランドスタートの案内があったのが昨日のことのように感じます。改めて私が知りたいのは「メタルファクトリー」がなぜ生まれたか。老舗ゴルフ商社・朝日ゴルフの決意を内本浩史社長に伺いました。
「当時、私たちは創業50年を過ぎ、長年営んできた卸業だけでなく、自らでプロダクトを企画・開発する総合ゴルフメーカーになるべく新展開を進めていました。当社はGPS距離計『イーグルビジョン』がメインプロダクトですが、総合メーカーとしてクラブの存在は絶対だった。ナショナルブランド=先進性(最先端)という価値観がゴルファーにある中、それらにはカタチにできない独自性をアピールするためにパーツブランド、いわゆる地クラブとして勝負することに至りました」。
独自性をアピール・・・。「メタルファクトリー」の初代ドライバーGT3000とS360というモデルのデザインに私は驚かされました。鏡のような鏡面仕上げのモデル、そしてスポーツカーを彷彿させるようなストライプデザインのモデル。どちらかと言えば硬派な部類のパーツブランドでは明らかに異質の存在でした。ただ私がそこに共感できたのは、しっかり機能性が追求されていること。ただのキワモノではないよ、というメッセージ性を感じる少し不気味な存在感でした。
「10年前当時は、フェースの反発=飛びが注目されていました。“フェースを薄く削れば飛ぶ”なんて業界として良くない都市伝説も多々あったほど。当社ができることは生真面目に飛びを追求すること。開発ではルールに迫る反発力とし、出荷前にR &A公認CT値測定器を用いて全ヘッドを測定、最高の反発力を持ったものだけを製品としました」。
フェースの反発値の全数検品は、今ではナショナルブランドも行うようになりましたが、その先駆けが「メタルファクトリー」であったことは間違いない。パーツ界だけでなくナショナルブランドまでに、ものづくりにおける発想の影響を与えていたのです。
「『メタルファクトリー』はその名の通り“鉄工場”を意味します。モデル毎のターゲットプレーヤーを意識しつつ、鉄で表現できる機能性は常に新技術を取り入れて追求。その上でデザインや質感などで他にはない鉄遊びをしていたい。その世界観に共感していただけるファンを裏切らない、そしてファンの皆様を驚かせるプロダクトをこれからも作り続けていきたい」。
パーツブランドを選ぶゴルファーが期待するのは、ナショナルブランドにはない流行を追いかけない機能、そして圧倒的な個性にあります。「メタルファクトリー」は個性そのもの、いいパーツブランドです。一工房店主の意見としてはもっと主張があればさらに面白い存在になる。きっと私を含めたメタルファンは10年前に初代プロダクトで感じた“生真面目なキワモノ感”が生み出す鉄遊びに期待しているはず。これから先の10年が楽しみです。
機能を追求するのは当たり前、デザインや質感など鉄遊びをしていたい。
(左)朝日ゴルフ 内本浩史社長
私はメタルファクトリーにしかできない、ユニークな展開をいつも楽しんでいます。
(右)鹿又芳典
10年の時の流れで「メタルファクトリー」の独自性は進化。鉄の美しさをゴルファーがダイレクトに感じられるデザインを主張されている。
初代「メタルファクトリーS360」、レーシングカーを彷彿させるストライプデザインは、無骨なイメージのあるパーツブランドとしては異例の存在になりました。
朝日ゴルフ「THE BASE」の奥には、ひっそりと「メタルファクトリー」の検品場所がある。いち早くR &A公認CT値測定器を導入し、ルール内の反発力の限界をカタチにしてきた。
改めて「メタルファクトリー」の今を知るべく、最新プロダクトを手にオンコースへ向かった。
もう何度も打っているはずだが、改めて実戦で感じた好結果に10年の月日で獲得したブランドの存在意義を感じた。
AIM HIGHER─モクヒョウタカク─
A9─SKY─ FW &UT
ヘッド全体重量70%を高比重ステンレスでソール部に集約。軽比重のチタンフェースとの重量ギャップで生まれるインパクトのブースト効果により、ボールを高く、強く押し出していける。異素材の特殊一体構造でパワーの伝達効率を最大限に高めた。
ブランドが10年歩めば、必ず“らしさ”という、ブランドのカラーが明確になっているものです。「メタルファクトリー」に至っては、“鉄遊び”という他にはないデザインにこだわり、「A9FW」はグッドデザイン賞を受賞。しっかり遊び心はプロの目や市場でも評価されています。が、私が気になるのはこの10年の月日でパフォーマンスがどういう価値観でゴルファーに浸透してきているのか。プロダクト担当の粟田祐二さんが話してくれました。
「『メタルファクトリー』はこの10年、信頼ある取引先様との取り組みによってファンを堅実に獲得してきました。その活動理念として私たちは無闇に取引先を増やそうとせず、ファンが期待するパフォーマンスである“やさしさ”を研ぎ澄ましてきた10年でした」。
パーツブランドは一見、一部のプロや上級者、アスリートのこだわりを満たすための世界観に見られがちですが、決してそうではありません。全国の工房店の先にはスキルに関わらず、真剣にゴルフを向上したいと願うゴルファーが店主を信頼し、自らが向上できるクラブ選びをされています。
「『メタルファクトリー』は単なる飛び性能ではなく、“打ちやすさ”というやさしさを優先して進化させてきました。その機能にやさしく馴染むことができて、初めて飛びを享受できるのは間違いないからです。一見、他に比べ機能に個性が少ないと見られがちですが、10年あらゆる活動を通して、『メタルファクトリー』はユーザーの皆様が必要とする“やさしさ”という機能性の答えを追求することをポリシーとして来ました」。
最新「A9スカイ」のFW&UTがパーツブランドでは類を見ない支持を得ています。試打して理解できることは、実戦において“好結果”が発揮できる“やさしさ”があるということ。“やさしさ”は単にボールが上がりやすい、つかまえやすいというものでなく、実戦の場で同じ弾道、確かな結果に安心感が持てる実戦力のことを言うのです。「A9スカイ」FW&UTに、改めて「メタルファクトリー」の集大成と未来を感じることができました。
真摯に向き合ってきた“やさしさ”のカタチが鹿又さんにハマって嬉しく感じます。
プロダクト担当 粟田祐二
弾道の高さ、再現力、ライを選ばない安定力は凄いものがある。
鹿又芳典
A9-SKY- UT(右)
A9-SKY- FW(左)
様々なライが存在するコースでは、当然打点は不安定になるもの。しかし、そんな条件をモノともしないのが「A9-SKY- 」FW &UT。弾道の高さ、最高到達点が一定で、キャリーが安定しやすい。セットアップ時にはフェース面のスクエア感が際立ち、弾道はフェース面に対して直進していく感じでシンプル。スキルは関係なく、実戦で好結果を求めるゴルファーに試していただきたい(鹿又)。
取材協力=西神戸ゴルフ場
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