「目玉」を前に「なんでやねん!」と悪態をつく。落胆はハンパない。だが、グリーンキーパーからすれば、「その目玉一つにも、どれだけ手ぇかかってる思てんねん」であろう。
バンカーを放置すれば、細かい砂は雨に流され、締まり、目玉などできようもないカチンコチンの代物になる。グリーンは数日手を入れないだけで別モノになる。散水や排水の設備はコースの各所に埋め込まれ、日々芝を刈り、定期的に目土を施して美しいフェアウェイを育てる。ラフは放置が許される場所ではなく、刈り込みもすれば、落ち葉も拾う。ロストボールを防ぐのも仕事である。
熱帯化する日本の夏は容赦がない。コースを覆う芝はイネ科の植物だ。ベントは寒冷地に適した芝だったが、暖地でも維持できるよう工夫が重ねられてきた。が、キーパーの気合い頼みで夏を越せるほど、温暖化は甘くない。暑さに強いバミューダへの転換、高麗芝の復活、2グリーンの再評価。木々の立ち枯れや獣害も深刻さを増している。
芝がイネ科と思えば、洋風の美しいフェアウェイも日本の原風景たる青々とした田園に重なる。そこに落葉樹や花が季節ごとの彩りを添え、コースの景観が立ち上がる。
ゴルフは「自然との闘い」と言われるが、キーパーたちが丹念に育んだ舞台と思えば、豊穣を祝うお祭り騒ぎに思えてくる。
昨年ラウンドした中国のコースでは、傾斜地一面に茶畑が広がっていた。その茶葉で淹れたお茶をキャディーさんが振る舞ってくれる。お土産も、もちろんお茶だ。途中、果実畑もあり、季節ごとの実りが楽しめる。僕が訪れた折はミカンの時季だった。たわわに実るミカンをもいで頬張りながらのラウンドは、実に美味かった。
そんなわけで、「目玉」を前にしたときは、一礼してバンカーに入る。これくらいの礼儀は払うべきである。だが、口をついて出るのは、やはり「なんでやねん!」――人間の性には勝てない。
内本浩史(うちもとひろし)
BUZZ GOLF 主筆
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