1. HOME
  2. 連載
  3. 今月のゴルフ愛 最後の一滴「魔の距離」
連載

今月のゴルフ愛 最後の一滴「魔の距離」

連載

バスケットボールは、聴覚に響くシュパッ!という音。サッカーは、キーパーの後方にボールが流れる瞬間の視覚。野球は、ベースを踏む足裏の蝕感。競技固有の感覚が脳髄を刺激する。

ホームランは、得点が決定されても全てのベースを踏みしめる。ゲームの効率性よりも、ベースを踏む感覚が重要と考えてのことだろう。

フリーゴールやフリーキックは、「決めて当たりまえ」という緊張感がドラマを生み出す。シキタリが簡単なほどに緊張感は高まる。

さて、ゴルフである。最大の醍醐味は、ボールがカップに吸い込まれる瞬間にある。然るに、「OK」というスゴイ魔法がある。スロープレー排除を大義としたルール外ルールであるが、3パットの恐怖を霧散させる魔法であり、畏敬の相手への忖度でもあるが、用法を誤れば、ゴルフの醍醐味をコロスだけでなく、人間関係を崩壊させる呪詛にもなる。

ワングリップというアバウトさが、2グリップ前後の距離を「魔の距離」とした。
「OK」を求めて上目遣いで相手をチラ見する距離。「打ちまーす!」とOKを断るのも、大人気なく感じる距離。「OKでーす」を迷っている間に人間関係にヒビの入 る距離。「魔の距離」である。同時に、最高にエキサイティングな距離でもある。

「魔の距離」を最大限に楽しむならば、2パットを必須とし、3パットが決まってしまえば、ズタズタに傷ついた心に免じてOKもヨシ。パットする人がOKを望めば、打つも打たぬも自己判断。あとは状況次第である。結局、プレーファストに気遣いつつ、それぞれの面白さを見つければ良いのだから。

そう言えば、ホームランの歓喜で1塁を踏み忘れた選手がいた。レジェンド長嶋茂雄である。もちろん、アウトである。

内本浩史(うちもとひろし)
BUZZ GOLF主筆

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。