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BUZZ GOLF 2020年3&4月号 発行
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今季、メジャーチャンピオンとなったベテランプレーヤーが、長尺ドライバーを武器にして戦った勇姿が話題となった。若手に負けない飛距離は改めて長尺ドライバーが有利だと多くのゴルファーが再認識したことだろう。
では改めて長尺ドライバーを使う意義、飛距離追求の正論を唱え続けるメーカーのメッセージを記そう。
長尺ドライバーが飛距離に有利だという事実は、多くのゴルファーが認識しているはずだ。単純にシャフトが長くなれば、スイングの円弧が大きくなるため先端のヘッド運動エネルギーが上がり、ヘッドスピードアップに繋がるわけだ。現実、飛距離を争うドラコン競技では1ヤードでも遠くへ飛ばすために長尺仕様ドライバーを駆使して300ヤードを楽に超える世界で飛ばしが競われている。
ただ“一撃必殺”だという印象もあり、飛距離に有利な事実が理解されながらも、一般的に定着しづらい存在なのは確かだ。ただメジャーチャンピオンが駆使するその姿から、私たちにも長尺ドライバーによる実験的飛距離の覚醒がある可能性は否めない。
さて、少し昔話をさせていただきたい。今から数年前に時はさかのぼる。ドライバーのヘッド体積は300cm³に満たない時代、フォーティーン「ゲロンD」がバズっていた。当時、ツアーのトップクラスの平均飛距離が280ヤード台の中、「ゲロンD」を使うプレーヤーが、300ヤード超えを連発したことで脚光を浴びた。スペック的には長さインチ、ヘッド体積は300cm³と当時では圧倒的に先駆的。設計を担当した※竹林 隆光さん(故)がエピソードを話してくれたことがある。
「かつてパーシモンからメタル、そしてチタンへと目覚ましい素材進化によってドライバーのヘッドが大型化を辿り、大きくなった投影面積に比例するシャフトの長さと飛距離の可能性に注目したのが取っ掛かりでした。シャフトの長尺化は物理的に明らかに飛距離に有利になりますからね。フォーティーンとしては素材や製法の進化による物理的優位性を、ゴルフクラブとして完成させていきたいという想いがあります」。
フォーティーンの竹林さんといえば、今では当たり前に使用される重心距離や慣性モーメントなどといったヘッド性能を数値化したパイオニアである。長尺は時代時代でいつも脚光を浴びるが浸透しきらない中で、竹林さんはクラブエンジニアとして物理的に優れている要素を除外するわけにはいかないというポリシーがあった。その意思を継ぎフォーティーンは現在に至るまでとことん長尺ドライバーにとことんこだわり続けてきた背景がある。竹林さんに聞いた貴重なエピソードがもう一つ。
「長尺ドライバーは何かと“難しい”と言われがちが、その理由の一つひとつにはあまり私を納得させる根拠がありません。長尺だけがクラブの進化ではありませんし、ゴルファーはその一つひとつに順応してきました。ただ長尺ドライバーは、練習で感覚的に馴染むことが大切なのは間違いありません。ゴルフはスポーツ、練習で新しい感覚を自分のモノにする努力も飛距離アップには必要だということを、少しでも意識してもらえたら嬉しいですよね」。
ドライバーというクラブは飛距離を優先するクラブだ。狙う精度が要求されるアイアン、ハイブリッド、フェアウェイウッドというセッティングの流れからは、ドライバーは性能的にも別次元にある存在である。メジャーチャンピオンとなったベテランプレーヤーはその事実を誰よりも理解し、長尺ドライバーを導入して若手にも負けない飛距離で大舞台を制した。
私たちはドライバーに何を求めているだろうか。“飛距離”と答えるなら、長さへの苦手意識はその可能性を遮ってしまっている。メジャーチャンピオンをリスペクトし、長尺ドライバーを注目する時は来た。飛距離アップに必要なのは速さ、インパクトの加速感に優れたドライバーを今の時代で見つけ出したいものだ。
竹林さんは生前、クラブデザイナーとしてクラブ理論を展開するメディアでお馴染みの存在で、筆者も取材で何度もお世話になった。
※竹林隆光
たけばやしたかみつ、1949年-2013年。1973年成蹊大学法学部卒業後、ヨコオゴルフ入社。1981年に独立して(株)フォーティーンを設立する。重心、慣性モーメントなどクラブの性能を数値化。アイアンの中空構造をカタチにした。各メーカーのOEM設計を手がけ、数々のヒット商品を世に送り出して、日本を代表するクラブデザイナーとして活躍する。1975年香港オープンベストアマ、1977年日本オープンローアマなどプレーヤーとしても輝かしい成績を残している。
上記で紹介した初代「ゲロンD」から数年の時を経た2021年秋、フォーティーンとしても3年ぶりとなる新作「ゲロンD」が登場する。テーマとしたのは“軽さ”、ヘッド重量は180グラムを切ってしまう圧倒的な軽さだ。巷を賑わす流行ドライバーとは一味も二味も違った世界観で飛距離が追求されていることがわかるだろうか。
というのも、昨今の流行ドライバーの特徴は5000g・cm²を超える大慣性モーメントにあること。ミスショットによる打点ブレでもボール初速を確保することを目的にされていることが多い。この大慣性モーメントを実現するためには、効果的な周辺重量配分とともに、ゆうに200gを超えるヘッド重量を要してしまうため、重量級ヘッドとなっていることも特徴の一つ。実はやさしいようで一定以上のパワーを要してしまうと言える。
軽さで勝負するフォーティーンにその根拠を聞いてみた。
「まず一つポリシーとしてフォーティーンは流行に沿った開発をしないことが前提です。新作の『ゲロンD』は、飛距離性能を追求するためにヘッド重量の軽さに注目。ゴルフクラブにとって軽さは軟弱なイメージもありますが、軽さこそが素材や技術の進化そのものだと考えます」。
軽量ヘッドのメリットを最大限に活かし、フォーティーンはあくまで全ゴルファーに対応した飛距離の優位さ、強さを新「ゲロンD」で提言する。
「軽量ヘッドは慣性モーメントが懸念されがちですが、その効果が最大限に発揮される4100g・cm²超の性能は確保しています。軽さは単純に速さになります。ヘッドを加速させる快感を堪能いただけると思います」。
軽量ヘッドは、もちろんフォーティーンがこだわり続ける長尺ドライバー仕様にも対応。さらにあらゆるシャフトの長さにも対応できる工夫も成されているというが、その技術は今号では残念ながらレポートすることはできない。
さてヘッドの軽さが軟弱ではないことを証明してもらうために、フォーティーンの屈強な営業スタッフたちに急遽試打を依頼した。皆、ヘッドスピード以上のアスリートたちだが、そのイメージと反して強烈な弾道を披露してくれた。新「ゲロンD」が発売されるのは9月の予定、とにかく独自路線で飛距離追求されたドライバーだけに、初代にも負けない伝説を築いてしまうかもしれない。
三好 海土さんは群馬県アマチュアゴルフ選手権を優勝した実績のあるトップアマ。「ヘッド自体はつかまりがよく、かなり強い弾道がでます。早く試合で使いたい、と感じましたね。とにかく振りやすい、テークバックの始動からフィニッシュに至るまでスイングの全てに好影響を与えてくれるドライバーです」。
中嶋元さんは、かつてプロゴルファーを目指していたアスリートゴルファー。「46.75インチで試しましたが、ヘッドコントロールが容易なためボールがつかまり長尺感がないのに驚いています。ロースピンなのも特徴、これまでの弊社のドライバーの全てを超えるプロダクトです」。
久保龍暉さんはベストスコア81。入社からスタートしたゴルフの腕はメキメキ上昇中。「不意に訪れるドライバーの曲がりがスコアを崩す原因のほとんどですが、『新ゲロンD』の直進性の高さ、そしてスイングのしやすさは、弾道を制御できるようになりました。飛距離も十分、人生最高に飛んでいるので、夢の70台が現実味を帯びてきました」。
山根 一記さんはジュニア時代からゴルフに邁進してきたベストスコア69の腕の持ち主。「ヘッド重量は軽いのに、インパクトで押していけるような感覚があります。なのに、スピード感が半端ない。ロースピンで棒球の強弾道で飛んでいくのも凄い。長尺だから吹けあげる、軽いから軟弱という市場のイメージは全くありません」。
撮影=小林 司、内田 眞樹
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