今日を占う朝一のティショット。鼓膜の内側からドクドクと鼓動が聞こえる。できればボギー。パーなら儲けもの。
「欲張るな。距離はいらない。フェアウェイを捉えればラッキー」。
そう言い聞かせティアップ。軽く素振りしてスタンスをとる。脳内では管制スタッフたちが慌ただしく最終確認を行っている。
「方向よし!」「重心位置よし!」「左肩よし!」…
ランプがレッドからグリーンへ変わる。
ローンチ・ディレクターが鷹揚に宣言する。
「始動!」
が・…トップの直前、管制官の絶叫が響く。
「左手親指位置確認漏れ! 右OB方向へスライスの可能性大! アボート!」
バランスを失ったスイングは、連結部から次々に崩壊し空中分解を始める。飛び散る意識。その片隅に、叢へ消えるドチーピンの白い球だけが見えた。
「強い気持ちを持て!」「自分を信じろ!」とは、闘う局面でよく使われる言葉だ。確かに気持ちは大切だが、技術や知識があっての気持ちでもある。問題は、僕なりの技術が今日も機能するのかと疑心暗鬼に陥ることだ。昨日の練習と今朝の練習では、何も変えちゃいないのに球筋が違う。不安を消そうと確認し、確認するほど考え、考えるほどカラダは迷う。そのくせ、知らぬ間に「欲」というノイズまで入り込めば、本来の自分はもういない。
要は、心がカラダに口を出し過ぎるのだ。カラダの動きを邪魔する心。それが「邪心」というものか。良いショットは、ただ気持ちよく振れたときに訪れる。でも、無心になどなれない。緊張するなと言われても緊張する。ならば「ドックンドックンしてるわぁ~」と、その鼓動までご機嫌に楽しんでみるのも一興。
「楽しみて以て憂いを忘る」と、2500年前に孔子様も語っている。緊張も不安も抱えたまま一打に夢中して、その喜怒哀楽をスコアに刻む。反省だらけのゴルフも大いに結構!懲りずに、次の一打を楽しもう。そう思うことにした。
内本浩史(うちもとひろし)
BUZZ GOLF 主筆
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