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今月のゴルフ愛最後の一滴「サラゼンからの贈り物。」

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 一人のプロゴルファーの逆転の発想が、ゴルフを劇的に変えた。ジーン・サラゼン(1902-1999)である。彼の発明は、近代ゴルフをダイナミックで想像力に満ちたものに変えた。
アプローチで使う代表的なクラブは「ウェッジ」である。「クサビ」を意味する。クサビは、隙間に差し込み、強く打ち付けることで、内から外へ力を広げる。

 サラゼン以前、バンカーからの脱出は、球を直接打つか、球の手前の隙間にヘッドを打ち込み、砂もろとも掻き出すのが一般的だったようだ。まさにクサビである。

 工夫は「掻き出し方」に集中した。フェースを櫛状にカットしたものや、スプーン状に凹ませた異形が登場し、ルール論争も巻き起こした。

 ところが、サラゼンはその常識を疑った。砂ごと球を掻き出すのではなく、ヘッドを砂に潜らせない。クサビを、クサビのように働かせない。この発想がゴルフを変えることになった。

 1930年代初頭、サラゼンは移動中の飛行機の中で閃いた。翼は気流を受けて機体を浮かせる。ならば、ウェッジのソールに翼を付ければ、砂に潜り込もうとするヘッドが浮き上がるかもしれない。いわゆる「バウンス」である。クサビが、クサビとは真逆の働きをするクサビとなった。

 サラゼンの逆転の発想と実現に向けた勇気が、ゴルフの未来を拓いた。その想像力はバンカーショットという領域を越え、多彩なアプローチ技術を生み出し、同時に道具の進化も加速させた。

 ピッチングウェッジ、アプローチウェッジ、ロブウェッジ……そして、令和の現在、我々は、道具と技と距離の間で心が揺らぐ。挑戦する勇気と怯む心。その両方にクサビを打ち込む。サラゼンは、そんな役目を「ウェッジ」に与えたのかもしれない。

 ところで、「ギャップウェッジ」である。距離のギャップだけでなく、心のギャップもそっと埋めてほしい…そう願うのは、アプローチで心が折れる僕と、御同輩だけだろうか?

 

内本浩史(うちもとひろし)
BUZZ GOLF 主筆

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