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飛距離を制限するルール改訂はなぜ必要ですか?|ゴルフルールの総本山、R&Aに緊急取材!

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3月6日〜8日に横浜で開催されたジャパンゴルフフェア、この会場にゴルフルールを司る英国の総本山、「R&A」の博士が訪れていると聞き急遽取材を申し込んだ。
2030年から改訂される新ルール〝飛ばないボール〟の真意に迫る。

取材に応じてくれたのは
マーク・グラッタン博士
R&A
ディレクターエキップメントスタンダード

ボール飛距離制限はエリート、アベレージともに2030年からスタート

当初、ツアーをはじめとするエリートプレーヤー向け競技で、2028年に先行適用される“飛ばないボール”規制だったが、R&A(全英ゴルフ協会)とUSGA(全米ゴルフ協会)は2030年1月1日からエリート、アベレージともにすべてのゴルファーに対して一斉に適用する単一日施行へ移行する案を3月17日に提示した。

2030年に改訂される新ボール規制とは

ヘッドスピード125mph(55.88m/s)時において、打ち出し角11度、スピン量2220rpmで打たれた飛距離が最大317ヤード(誤差3ヤード)までとされ、ロングヒッターで約15ヤードの飛距離が制限されると試算されている。エリートプレーヤー、一般的ゴルファーともに2030年に適用され、アベレージクラスでは5ヤード以下の影響と言われている。

ちなみに取材に立ち会ったガッデム竹田(64)の飛距離に影響があるか尋ねた。平均飛距離約170ヤード、道具が飛ばなくなるのは笑い事ではなく困る。「ほぼ影響はないと思います。アベレージゴルファーの多くはベストな道具を選べば、もっとたやすく飛距離アップができるのでは」(グラッタン博士)。アベレージゴルファー、すなわち一般的なアマチュアゴルファーの飛距離アップへの可能性はこれまで通り心配なさそうだ。

[ルール改訂の目的]
プレーヤーのスキルと
進化する道具の技術の
バランスを保つこと

ゴルフ歴が長い読者の皆さんは、多くのルール改訂を経験してきたことだろう。近年ではピンを差したままパットできることになり、膝下からのドロップなど、プレーがスピーディーかつシンプルになった。

「ゴルフルールは4年に一度、大きな改訂に取り組んでいます。私たちは世界のゴルフ環境やプレースタイルを研究し、よりシンプルなルールへと改訂を目指しています。ジャパンゴルフフェアへ来日した目的は、JGAとの定例ミーティング、そして日本のゴルフメーカーとのコミュニケーション。様々な意見をリサーチした上で、新ルールのアイデアを提案し、意見をフィードバックしているのです」とグラッタン博士は語る。同氏は主にエキップメント(ゴルフギア)のルールに携わっている。ゴルフギアのルール改訂といえば、近年ではドライバーの飛距離を抑える傾向にある。2008年には高反発フェースが規制となり、2022年には長尺シャフトが規制された。そして来る4年後、2030年にはさらにボールの飛距離性能に制限がかかる。なぜ、R&Aは飛距離を抑えるのか。

「トップエリートプレーヤーたちの平均飛距離は、1年に約1ヤード伸びているデータがあります。もちろんスタッツが向上しているのはフィジカルがアップしていることも要因ですが、ボールの性能も間違いなく向上している。飛距離アップに対してゴルフ場の距離は伸ばすことはできない。だからこそ、飛距離を制限する必要があるのです」。

エリートプレーヤーとは、競技において優れた成績を残すゴルファーのことを言う。いわゆるツアープレーヤー(プロゴルファー)たち、そしてトップ競技で活躍するアマチュアゴルファーのことだ。ゴルフギアのルール改訂は彼ら(男子エリートプレーヤー)のプレーを制限することを目的とされている場合がほとんどだ。“道具で飛ばしたい!”、そう願う一人のアマチュアゴルファーとして、単純にエリートプレーヤー向けの制限が適用されるのは、不公平さを感じなくもない。

「R&Aでは独自の測定技術があり、2023年には測定ロボットを修正しました。そして私たちはヘッドスピード別で入念なテストを行っています。2030年に改訂されるボールの飛距離制限は主にトップレベルを制限するものであり、アベレージゴルファーはほぼ違いを体感しないレベルだと想定しています」。

主にその対象となるプロダクトは、ツアーボールであることは推測できる。ヘッドスピードがトップレベルの圧倒的な飛距離への制限だけに、一般的なアマチュアゴルファーにとっては、ほぼ影響がないとも言われている。プロとアマチュアでバットの飛距離が制限されている野球のように、もっと飛ばしたいなら、いわゆるディスタンスボールを賢くセレクトすることも一つの手であるし、それらのさらなる進化も期待できる。

「ゴルフは性別、年齢を問わず、ある程度の公平が成り立つ競技です。スキルの差を道具の性能で埋めることも可能であり、そのハンデを制定するのもルールの大切な役目。プレーヤーのスキルとギアのテクノロジーのバランスをとるのがルールの目的なのです」。

PGAツアーの平均飛距離1位(3/17現在)はゲーリー・ウッドランドで326.2ヤード(ツアー平均302.2ヤード)。ちなみに10年前の2016年はJ.Bホームズの314.5ヤードが1位(ツアー平均290ヤード)、10ヤード超の飛距離アップしていることがわかる。2030年に改訂されるボールの飛距離制限は主に300ヤードを楽に超える選手たちに影響を与えるものだとイメージできる。
写真=aflo

撮影=高橋淳司

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