時は幕末。吉田松陰が現れた。
彼は、幕藩体制を維持するための儒教「朱子学」から離れ、知識と行動を一体として未来を切り拓く「陽明学」を基盤に、西洋の知識をも果敢に取り込もうとした。その思想は桂小五郎、高杉晋作、若き伊藤博文などに受け継がれた。薩摩の西郷隆盛や、水戸学の影響を受けた徳川慶喜にも同種の思想が流れていた。この共通の思想哲学が、激動の時代に挑む多くの日本人の精神と行動を鍛え上げ、薩長同盟、大政奉還、明治維新と、日本をしてアジア近代史の「奇跡」と呼ばれる大転換の原動力となった。
翻って現代である。国家の進路を決する局面において、「政治理念」を横に置き、無節操に『数合わせ』ばかりに終始しているようでは、未来を語る土台すら危うい。
日本初の女性首相からは、どこか明治の匂いが漂っているような気がする。日本を今一度、世界で闘える姿に仕立て直してくれたなら嬉しいものである。
さて、本号のお題は「挑戦!」だ。この“挑戦”を自然にやってのけるのは、いまどきのゴルファーだ。万博パビリオンを待つ列の中にも多くのゴルファーを見た。肩幅に足を広げ、体を軽く捻り、重心を探る。脳内スクリーンに昨日のスイング動画を再生し、イメージと動きを重ねている。「ビシッ! ぎゅーん!」白い弾道が大屋根リングへ一直線に伸びているのだろう。
飛距離が欲しい。真っすぐ飛ばしたい。チーピンは避けたいし、ドスラもチャックリも勘弁してほしい。ゴルファーは溢れ返る情報の中から新たな挑戦を見つけ出しては実践を重ねる。「スイング改造」はもはや特別な挑戦ではなく、日常の習慣となった。数々の挑戦は「上手くなりたい!」という一点において無節操とは異なる。繰り返しの挑戦から得た気付きが成果となってゴルファーを貪欲にさせているのだろう。ゴルファーのゴルファーたる所以とは、「知行合一」。コレに他ならない。
内本浩史(うちもとひろし)
BUZZ GOLF 主筆
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