醍醐味はフチにある。
サッカーのゴールは四角く、バスケットのゴールは丸い。ホームベースは変則五角形でダイヤモンドの端は外野の奥まで続く。ボクシングは“リング”と呼ばれているのに四角く、柔道は畳を敷き詰めるから当然に四角い。それぞれのフチで物語が生まれる。
大相撲が始まると、日曜日はどうにも忙しい。ゴルフから帰り、女子ゴルフを観戦し、大相撲に熱を上げ、時に男子ゴルフを観る。結局、大河ドラマが終わるまでをテレビの前で過ごすことになる。
土俵際のウッチャリに「うぉぉ!」と声をあげ、カップに向かうボールに息をのむ。クルリと回って、俵だか、カップのフチだかを飛び出せば、『あぁ…』とため息が漏れる。砂煙に包まれて舞い上がったボールが軽く弾んでカップのフチにつんトンと止まり…静寂に押されるようにユラリと沈めば、「よっしゃ!」と我がことの如くに拳を握る。フチは物語を俄然面白くする。
加えて、日本人は緩急の「間」をことさらに愛する。
見合っては力水所に戻り、清めの塩を高く撒き、また見合い…。日本人が野球を好んだのは、相撲から派生した間に拠るところが大きいと思う。
ボールとカップを往復し、腰を屈め、跨ぎ、陰陽師さながら指を立てラインを読み定めて振り幅を整える。その間、解説者が、気迫に満つるプレイヤーの歳月を物語る。積み重ねてきた数々を、今、この刹那に発揮する。乾坤一擲の大一番、大一打。我らはただただ固唾を呑む。──ハッキヨイ!発気揚々!
真剣勝負のギリギリでフチとフチが交錯し、重なり合って縁(えん)となり、やがて日々を縁取りひとつの風景を描き出す。僕らはみんな「縁」イッパイで生きている。願わくば、土俵の真ん中で大相撲を取りたいものだが、気付けばいつも勝負はグリーンサイド、土俵際。それとて必死のパッチ。悪くはない。今日も発気揚々! ハッキヨイ!
内本浩史(うちもとひろし)
BUZZ GOLF 主筆
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