今月のゴルフ愛 最後の一滴「ボールと恋心」

人生初のティショットを前に女子社員が放った一言が伝説として我が社に残っている。時はバブルに向かってゴルフ女子が増え始めた頃のこと。ティイングエリアでキョロキョロと何かを探す彼女。困惑した表情で初ラウンドを共にする上司に聞いた。
「あのぉ・・・ボールはどっから出てくるんですかぁ？」

ゴルフを知る者には荒唐無稽な彼女の質問も、世間の常識からすれば、さほど間違っちゃいない。

ゴルフは、「MY BALL」を使う。他の球技と比べ、この一点が決定的に異なる。サッカー、バレーにバスケと、おこづかいを貯めて買ったボールは、「俺のボールだから触るなよ！」とはならず、仲間と共に使う。個人競技のボウリングは、ボールを借りるのが普通であり、MY BALLは競技に打ち込む決心で購入される。

ゴルフは、ラウンドデビューであっても、自分でボールを用意しなければならない。確実に無くすのだから、初心者ほど多く用意する必要がある。「レンタルボールありますか？」とフロントで聞くのも道理で考えれば不思議ではない。

ボールにフルネームを書いたって、「内本さん、これ、3番ホールのラフに落ちていましたよ」と返してもらったこともなく、ゴルフ場の権利で練習場で使用するも、再販するもお構いなし・・・という判例まである。世間の常識からすれば、ゴルフの方が少々変わっているようだ。

青木瀬令奈プロは、試合でのOBは年に1回あるかなぁ？…　とのこと。ボールは無くならないのである。「調子のいいときのボールって、愛着が湧いてきて少々の傷なら使っちゃうんです」と、笑って話してくれた。傷付いても懸命に生きようとするボールはとても愛おしい。残念なことに、僕の恋心はいつも片思い。大恋愛に堕ちる前に僕を置いて去ってしまうものだから。さて、今日の恋の行方は？