1. HOME
  2. 連載
  3. 今月のゴルフ愛 最後の一滴「金のボール? 銀のボール? それとも……」
連載

今月のゴルフ愛 最後の一滴「金のボール? 銀のボール? それとも……」

連載

「あなたが池に打ち込んだボールは、この350ヤード飛ぶ金色のボールですか? それとも、100ヤードしか飛ばないけれど、決して曲がらない銀色のボールですか?」
もし、女神様にそう問われたら、僕ならきっとこう答える。
普通のボールをください」と。

金のボールは、思いきり飛ばしてスカッ!としたいという欲望の象徴だ。周囲を驚かせたい。イーグルを獲りたい。すごいスコアでラウンドしたい。それが、ゴルファーの本性である。

一方、銀のボールも捨てがたい。曲げずにリスクを避け、パーを重ね、たまにバーディーを拾う。ゴルフの本質を理性とすれば、むしろこちらの方が望ましい。

しかし、実際に使ってみればどうだろうか。

金のボールは350ヤードの大フックで谷底へ。銀のボールは、ピンまで30ヤードのアプローチをトップして奈落へと。どちらもミスによる大叩きは免れない。そもそも金や銀のカラーボールなんて、ラフに入れば芝影に同化してロストになりかねない。

結局、どんなボールを選ぼうが、スコアをつくるのは自力である。

飛ぶ日もあれば、飛ばない日もある。真っすぐ飛べば、突然曲がることもある。飛ばしたい、寄せたい、入れたい、勝ちたい。でも、曲がって、ザックリして、50cmを外して1mオーバー。悩んで、迷って、落ち込んで、たまに笑う。結局、矛盾が折り重なる中にゴルフがある。

ちなみに「金の斧と銀の斧」の寓話では、「鉄の斧です」と正直に答えた木こりの誠実さに女神様が胸打たれ、金・銀・鉄すべての斧を授けた。現代風にいえば、まさに“ディール”である。3本の斧を持ってニタリと笑って親指を立てる。あの金髪男の姿に重なってきた。

そして、僕は今日もいつものボールでプレーする。とはいえ、1球600円はくだらない。結局、微妙なその金額に、金と銀の色がじんわりとにじみ出しているのだ。性能の差なんて、僕にはさっぱりわかっちゃいない。

 

内本浩史(うちもとひろし)
BUZZ GOLF 主筆

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。